意外と知られていない相続の改正点

皆様こんにちは、河地孝明です。意外と知られていない相続の改正点についてお話させて頂きます。

①配偶者に対して自宅に配偶者が住み続ける権利が創設され、自宅を「所有権」と「配偶者居住権」に分離でき、子供が「所有権」を配偶者が「居住権」をそれぞれ相続できるようになりました。これにより配偶者は安心して老後を過ごせます。

②婚姻期間20年以上の配偶者から居住用不動産等の贈与を受け贈与税の配偶者控除により2,110万円まで贈与税が無税でも、相続時には相続財産の先渡し(特別受益)として既に財産をもらったように扱われていましたが今回、この分は相続財産に含めなくなりました。これにより配偶者は被相続人の相続開始時の預貯金等の財産について、改めて法定相続分どおりの相続権が認められました。

③長男の嫁が義父等の介護を1年以上続けた場合は、特別の寄与として長男の嫁にも相続権が認められるようになりました。この場合、義父等が要介護2以上であり、嫁が自ら介護記録や介護の領収書等を提示する必要があります。

④自筆遺言は全て手書でしたが、財産目録はワープロ等で作成可能となり謄本や通帳コピーなどの添付もできるようになりました。また自筆遺言は自宅保管しかできませんでしたが法務局で保管できるようになり、この場合は家裁の検認が不要となります。これにより遺言の改竄や紛失を防げ、未登記物件の社会問題も解決するものと思われます(但し、法務局は単に保管だけの制度ですので、公正証書遺言がやはり基本と思われます)。

⑤相続開始時には被相続人の預金口座が凍結されていましたが今回、預金額の1/3のうち各法定相続分相当額(150万円限度)が引き出せるようになり、葬儀費用や未払医療費などの支払いがスムーズにできるようになりました。なお、複数の銀行口座がある場合は銀行ごとに限度額の払戻しが可能です。

⑥遺贈が偏った場合は遺留分の減殺請求がありましたが今回、「遺留分侵害額請求」に変更され、不動産等の共有ではなく金銭で請求するようになり、一時支払が困難の場合は家裁で支払期限を設けての支払いが可能となりました。

この記事を書いた人

税理士 河地 孝明