無償贈与について

皆様こんにちは、河地孝明です。一般的に事業承継には「経営承継」と「株式承継」が考えられ、更に株式承継には「無償贈与」「有償譲渡」「相続遺贈」がありますが、今回は「無償贈与」について考えていきます。

第一に「暦年贈与」ですが、これは年月をかけて基礎控除110万円前後でゆっくり後継者に自社株式を贈与していきます。基礎控除を超える株価評価の場合は贈与税が課税されますが、20歳以上の子・孫が直系尊属からの贈与であれば特例贈与が適用でき一般贈与に比べ贈与税が安くなります。後継者の承継意思や能力・人柄などを見極め、育成しながらの株式承継はこの「暦年贈与」がよいかも知れません。

第二に「精算贈与」ですが、これは相続時精算課税を利用し自社株式を贈与します。

ある程度、後継者の承継意思が固く能力・人柄などに問題が無ければ、また株式分散防止の観点からも一気にまとめて後継者に承継します。そのタイミングは株価評価の直前期に先代に役員退職金を支給したり赤字決算を行うなど株価評価を下げてから贈与します。業績が好調で株価が上昇し続ける企業であれば、贈与時の低い株価を相続開始時まで固定でき相続税対策にもなります(贈与時の低い株価で相続財産に加算されます)。

第三に「納税猶予制度」ですが、これは先代経営者の死亡日まで課税価格100%の贈与税の納税が猶予され、先代経営者が死亡したときは猶予中の贈与税が免除され、代わって相続税の納税猶予制度に移行し、次回以降の事業承継まで相続税や贈与税の納税が猶予され続けます。この制度は創設以来、制度の難解性、手続の煩雑性、納税猶予取消のリスク性などから利用件数が増えませんでしたが、10年間の特例措置の創設により、かなり要件が緩和されました。つまり2018年1月1日から2027年12月31日までの10年間の特例で、2018年4月1日から2023年3月31日までの5年以内に都道府県から認定を受けた特例認定承継会社について要件緩和の特例が適用されます。

それぞれの株式承継につき、そろそろお考えになられてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

税理士 河地 孝明