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タックスヘイブン対策税制について

税理士法人サポートリンクの前田です。

今回はタックスヘイブン対策税制についてお話しします。

 

「タックスヘイブン」と言う言葉はニュースでお聞きになった事があるかもしれません。今から2,3年前にあったパナマ文書の流出のニュースの時などでは、良く耳にしました。

「タックスヘイブン」は”tax haven”と書き、直訳すると「税の避難所」。一般的には「租税回避地」などと訳されています。要するに税金から逃れるための場所ってことですね。ちなみに「タックスヘヴン」”tax heaven”「税・天国」ではありません。

この税金逃れを防止する法律が「タックスヘイブン対策税制」なのですが、その説明の前に税逃れの仕組みを説明いたします。

日本の税金は日本の法律により定められており、基本的には国内にしか効力はありません。例えば、アメリカの方がアメリカに住みながらアメリカで仕事をして得た所得に対して、日本の税金がかかる事はありません。その代りアメリカの税金を納める事になります。日本人もアメリカの税金は支払っていませんので、当然の話です。

ただ、税率はその国々の法律により決まるため、国によってかなり税率にちがいが出てきます。

日本の法人税の実効税率はおよそ30%ですが、アメリカは今年から20%ぐらいになっています。さらに低い所では10%以下の国なんかもあります。

するとどうでしょう。日本で100万円の所得を得れば、およそ30万の税金を払う事になりますが、アメリカであれば20万。もっと税率の低い国であれば10万以下になるわけです。

「では安い所で支払うようにしたら得だな」と考え行動にうつしたのが、上記のタックスヘイブンによる租税回避行為です。

具体的には、「税率の低い国へ移住してそこでお金を稼ぐようにする」や「税率の低い国に会社を作り、そこに利益が集まるようにし、日本の会社や個人事業は赤字にしてしまう」のような方法が考えられます。前者はおそらく現在も違法ではないですが、後者についての規制が「タックスヘイブン対策税制」となります。

「タックスヘイブン対策税制」の考え方は、国内の親会社が、租税回避目的でタックスヘイブンに子会社(以下国外子会社という)を作った場合、その国外子会社の所得も親会社の所得の一部と考え、日本の税金を掛けようと言うものです。例えば、日本税率を30%。国外子会社の国の税率を10%とします。そして親会社の所得0円、国外子会社の所得100万円の場合の税金は以下のようになります。

 

[国外子会社にかかる税金]

100万円×10%=10万円

[親会社にかかる税金]

100万円×30%=30万円

30万円-10万円(国外子会社が外国で支払った税金)=20万円

 

 

みていただければわかるように、国外に所得を逃がしたとしても、日本の税率分きっちり払うことになります。

ただ、これですべてうまくいったかというとそうでもありません。

このタックスヘイブン対策税制は、国外に法人を設立し租税回避する事を取り締まる規定ですが、問題は、租税回避のために設立した法人であるかの判定が難しいところです。どういう事かというと、この判定しだいで、純粋に海外進出を考えた企業が、たまたま税率の低い国で子会社を設立した場合、そこに日本の税率が実質的にかかってしまうことです。こうしてしまうと、世界での競争力の低下(現地の会社はその国の税金しか負担しないため)や海外進出自体の足かせとなる可能性があります。

この点について法律の改正があり平成30年4月以降、より実質的に判定しようという動きにはなっていますが、結局は形式的な要件が細かくなっただけで、中小企業などが徐々に海外進出していこうとする際には足かせになる可能性があります。

確かに上記の租税回避行為は取り締まるべきです。もし、これが昔からきっちり取り締まれていれば、日本の消費税もっと安かったかもしれません。ただ、中小企業が親法人の場合はもう少し緩和してもらえたらと個人的には思います。

<租税特別措置法第四〇条の四、六六条の六>

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