法人の青色申告と白色申告の違い
税理士法人サポートリンクの前田です。
今回は、法人における確定申告の青色と白色の違いについて説明いたします。
まず、申告には青と白の2種類があるという事をご存知でしょうか。
イメージとしては、青は「厳密な会計処理が必要とされる代わりに、税の優遇措置が受けられる。」白は「簡便な会計処理で良い代わりに、税の優遇措置が受けられない。」と言うものです。では、実際どちらを選択した方が良いのでしょうか。次にそれぞれのメリットを比較してみます。
◆青色申告のメリット
青色申告のメリットは、大きくは次の3つです。
①欠損金の繰越控除ができる。[法人税法五十七条]
企業は常に利益を出す事目標に経営されているとは思いますが、毎年利益が出るとは限りません。赤字となってしまった場合に、その欠損金額を最大9年間繰り越すことができます。例をとして1期目、2期目が赤字だった企業の、青色申告の場合と白色申告の場合を示します。
(青色申告の場合)
事業年度 | 1期目 | 2期目 | 3期目 | 4期目 |
所得(利益) | -400万円 | -100万円 | 200万円 | 600万円 |
欠損金の控除 | – | – | 200万円 | 300万円 |
欠損金残額 | -400万円 | -500万円 | -300万円 | -300万円 |
控除後の所得 | -400万円 | -100万円 | 0 | 300万円 |
法人税(30%) | 0 | 0 | 0 | 90万円 |
(白色申告の場合)
事業年度 | 1期目 | 2期目 | 3期目 | 4期目 |
所得(利益) | -400万円 | -100万円 | 200万円 | 600万円 |
欠損金の控除 | – | – | – | – |
欠損金残額 | – | – | – | – |
控除後の所得 | -400万円 | -100万円 | 200万円 | 600万円 |
法人税(30%) | 0 | 0 | 60万円 | 180万円 |
上記の例の場合、赤字となった1期目2期目は青色申告、白色申告共に法人税額はゼロとなり同じですが、3期目以降は、青色申告をした場合には欠損金の控除ができるため、税額に違いが出てきています。4期のトータルでは、青色申告の場合は90万円ですが、白色申告の場合は240万円。上記の例では150万円も青色申告が得になりました。
②欠損金の繰り戻し還付ができる。[法人税法八十条]
こちらも①と同様赤字になった場合の欠損金についての規定ですが、こちらは、赤字となってしまった今期の欠損金額を、前期支払った法人税額から現金で返金してもらう制度です。ただ、前期は黒字で今期が赤字と言ったケースしか適用できません。
③30万円未満の固定資産の購入費用が、購入した事業年度に全額費用化できる[租税特別措置法第六七条の五]
通常備品などの固定資産を購入した場合10万円以上の物は資産計上し、取得価格を法定耐用年数で期間按分する形で費用化する事になります。これが青色申告をしている場合、30万円未満の固定資産については、購入した事業年度に全額費用計上できます。
◆白色申告メリット
白色申告のメリットは、簡便な帳簿の作成が認められている事です。青色申告では、複式簿記による帳簿の作成が必要となりますが、白色申告は単式簿記が認められており、家計簿のように作成する事が出来ます。簿記などの知識がなくてもつける事ができる事がメリットです。
◆青色、白色どちらが得か
青色、白色どちらにもメリットがあるため、自分にとってどちらのメリットが大きいかを考える必要があります。
まず簿記の知識があるのであれば、青色申告をおすすめします。白色申告にないメリットがあるうえ、白色申告のメリットは簡便な帳簿の方法が認められているだけで、帳簿の作成の手間は青色と同じくかかるためです。
簿記の知識が無い場合は、「複式簿記を理解する」、「複式簿記を理解している人材を用意する」又は、「税理士事務所などに外部委託する」などが必要になります。それらの手間又は費用とメリットを比較してどちらが良いかを検討されたら良いかと思います。