消費税の簡易課税について
消費税の計算方法として、大きく分けて本則課税というものと簡易課税というものがあります。
通常、消費税の納税義務者は、預かった消費税額から、支払った消費税額を差し引いた額を納める額を計算するのですが、これが本則課税と言われるものです。一方で、簡易課税とは預かった消費税のみから簡便的に納税額を計算する方法です。簡易課税は適用するに当たって要件がいくつかありますが、業種や業態によっては本則課税に比べて納税額がかなり少なくなるケースもありますので、今回はこの簡易課税について説明していきたいと思います。
(1)適用を受けることができる事業者
まず、簡易課税制度の適用を受けるためには、基準期間(法人は前々事業年度、個人事業の場合は前々年)における課税売上高が5,000万円以下であることが要件となります。
(2)適用を受けるための手続き
簡易課税の適用を受ける場合は、その適用を受けようとする事業年度が始まるまでに「簡易課税制度選択届出書」を提出します。また、適用をやめる場合は、やめようとする事
業年度が始まるまでに「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出します。ただし、一度「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合は、最低2年間は継続適用をしなければなりません。
また、「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合でも、基準期間が5,000万円を超えているような場合は、その事業年度は自動的に本則課税での計算となります。
(3)計算方法
簡易課税制度を適用した場合の計算方法は下記の方法となります。
【預かった消費税-預かった消費税×みなし仕入率】
みなし仕入率は、その行う業種に応じてそれぞれの割合が定められています。
①第一種事業 卸売業 みなし仕入率90%
②第二種事業 小売業 みなし仕入率80%
③第三種事業 製造業、建設業等 みなし仕入率70%
④第四種事業 飲食店業、その他 みなし仕入率60%
⑤第五種事業 金融、保険、サービス業等 みなし仕入率50%
(飲食店業を除きます)
⑥第六種事業 不動産業 みなし仕入率40%
(4)計算例
卸売業、売上3,000万円、仕入2,000万円、その他経費700万円
金額は税抜き、消費税は分かりやすく8%とします。
売上が3,000万円ですので、預かった消費税は3,000万円×8%で240万円
卸売業なので、みなし仕入率は90%
よって、240万円-240万円×90%=24万円となります。
(5)2以上の事業を営む場合は
2以上の事業を営む場合は次のそれぞれの方法から一番有利な方法で計算をすることができます。
①それぞれの業種ごとにみなし仕入率を適用して納付すべき消費税額を計算します。
②特定一事業に係る課税売上高に占める割合が全体の75%以上である場合は、その特定一事業に係るみなし仕入率を全体に適用することができます。
③特定二事業に係る課税売上高の合計額が全体の75%以上である場合は、その75%
以上を占める特定二事業のうち、みなし仕入率の高い方の事業にはその事業のみなし仕入率を使用し、その他の事業については、その特定二事業のうち低い方のみなし仕入率を使用して計算することがきます。
(6)まとめ
簡易課税制度は、売上高から消費税を計算することができますので、計算が簡単であり、かつ業態によっては本則課税より有利である場合も多いです。ただし、大きい設備投資を控えている場合や、今後業態が大きく変わるような場合は、前もって本則課税に変更するといった準備も必要です。