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「工事完成基準」「工事進行基準」とは

皆さんこんにちは。
今回は、法人の収益認識の時期において、少し特殊なものを紹介したいと思います。それは、建設業などでよく出てくる工事についてです。

通常の収益に認識の時期(帳簿帳売上を計上する時期)は、資産の譲渡(商品の引き渡し)や役務の提供(サービス)が行われた日に計上することとなります。ただし、工事は、工事期間が長い場合が多く、完成まで収益認識しないとなると、以下の問題が発生するため、別の収益認識の考え方があります。

[問題点]

① 会計上の問題点
会計の目的は、会社の経営状況を正しく示すことが一番の目的です。完成・引き渡しのタイミングで収益認識する場合には、期中行っていた工事がすべて期末に完成しなければ、工事の仕事をいっぱい受注し、中間金として多額のお金を受け取っていても、今期の収益はゼロとなります。こうなってしまうと、本当に仕事がなく、収益がゼロの会社と同じような会計情報になってしまい、経営状況を正しく示すという観点からそれてしまいます。
② 税法上の問題点(要望?)
税法の目的は、担税力(税金を負担す力)に合わせて平等に税金を徴収することを目的としていますが、それと同時に安定した税収を得ることも必要とされています。そのため、工事が完成した・しないで納税額が大きく変わるより、安定して納税してほしいという考えがあります。

 

[収益認識の時期の考え方]

上記の事から、工事の収益認識については、以下の2つの考え方があります。
① 工事進行基準
工事の進捗度に合わせて収益を認識する考え方です。期末の時点で工事の進捗が60%で、工事の受注額の総額が1000万円なら、600万円を今期の収益として計上します。
工事の進捗度は原価比例法で見積もることが一般的です。期末までにその工事にかかった仕入や外注費などの工事原価が工事原価総額に占める割合をもって工事進捗度とします。
② 工事完成基準
工事が完成し・引き渡しを行った時点で収益認識をする考え方です。通常の収益認識と同じような考え方になります。

 

[認識方法の適用]

上記の収益認識の時期の適用については、会計と税法とで問題点の認識の違いから以下のような違いがあります。
① 会計上
会計上は、工事契約に関して工事の進行途上においてもその進捗部分について成果の確実性が認められる場合には、「工事進行基準」を採用し、その他の場合は、「工事完成基準」を採用しましょうとなっています。赤字の要件の部分は、工事の契約内容によって、「工事収益総額」と「工事原価総額」が適切に見積もられており、工事進捗度が適切に算出でき、また、完成後には必ず収益となる(売れる)場合を指します。要するに、ちゃんと計算できるなら「工事進行基準」で計算してくださいということです。
② 税法上
税法上は、長期大規模工事の時だけは、必ず「工事進行基準」で計算してくださいとなります。それ以外の場合はどちらでも好きなほうを選択できます。
長期大規模工事とは以下の3つの要件を満たすものをいいます。

 

[要件]

① 着手日から工事契約において定められる目的物の引渡期日までの期間が1年以上であること
② 請負対価の額が10億円以上であること
③ 工事契約において、その請負対価の額の1/2以上がその目的物の引渡期日から1年を経過する日後に支払われるものでないこと

 

[まとめ]

会計上と税法上を分けて説明してきました。要するに「工事進行基準」を採用すれば良いのかと思われたかもしれませんが、「工事進行基準」で進捗を算出するのは煩雑であり、実務上は長期大規模工事でなければ、「工事完成基準」を採用することの方が多いように思います。また、会計上の問題点として、「工事完成基準」では、経営状況を適切に示せないというように記載しましたが、実際は複数の工事を行っており、収益がゼロになるということはほとんどありません。また前期から行っていた工事が今期完成すれば、それを今期の収益として認識するため、1年の収益額としては、それほど的外れな数値にならない事もあります。
ちなみに、工事完成基準で、翌期の収益認識となった場合、それまでに収受したお金は、「未成工事受入金」として前受金として取り扱います。また、その工事について支払った外注費や仕入れなどの原価の額は、「未成工事支出金」として前払金として取り扱うことになります。その際、どの入金・出金がどの工事の分か把握する必要があるので、分かるようにしておきましょう。
(法人税法64条)

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