消費税の課税売上割合について
今日は、消費税の課税売上割合についてお話しします。
Contents
[1]課税売上割合とは
消費税の計算は、「売上金を受け取った際に預かった消費税額から経費などの支払いの際に預けた消費税額を控除した残額」により求める事が基本的な考え方となります。
①式(全額控除):
(預かった消費税額 – 預けた消費税額) = 納付税額
ただ、ケースによっては式のように「預けた消費税額」を全額控除する事はできない場合があります。その際に適切な控除額を算出するために使用するのが、「課税売上割合」となります。
課税売上割は、以下の式で求めたものとなります。
②式(課税売上割合):(1行目分子、2行目分母)
その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く)の税抜対価の額の合計額 /
その課税期間中に国内において行った資産の譲渡等(特定資産の譲渡等を除く)の税抜対価の額の合計額
※なお、売上げに係る税抜対価の返還等の金額はそれぞれ控除する。
これを正式では無いですが、分かりやすい表現に変えると以下の式のようになります。
非課税売上以外の売上の合計額 / すべての売上の合計額
[2]課税売上割合の計算はなぜ必要なのか
消費税は、最終消費者に消費税を負担させる事を前提としています。①式(全額控除)の場合は、売上金を支払ったお客様が消費税を負担する事になります。事業者は預かった金額と預けた金額の差額を納付するだけですので、理論上負担はしていないという事になります。
ただ、売上げによっては、お客様から消費税を受け取らない場合があります。それは、売上げの取引が非課税取引に該当する場合です。非課税取引とは、消費税としての性格上なじまないものや社会政策的配慮により消費税が課されないものがあります。例えば土地の売買や保険が適用される病院の治療費などです。土地は、使っても面積が小さくなっていったりしませんので、消費と言う性格になじみませんし、病院の治療は、社会政策的配慮としてそこまで税金を取らなくて良いのではと言う事ですね。
しかし、そうすると問題が生じます。①式(全額控除)で、土地の売買をした場合を計算してみます。
土地を1000万円で売り、不動産会社に売買の仲介手数料として108万円(内消費税8万円)払ったとします。そうすると、土地の売買は非課税ですので、0円-8万円 = -8万円となります。マイナスと言う事は8万円が事業者に還付される事となります。
こうなると、土地の売買に関する一連の取引について、お客様も事業者も消費税を負担しない事となります。そうすると税収が減ってしまうので、最終消費者が事業者となる調整が入ります。つまり、お客様が消費税を負担しない非課税取引場合は、事業者が負担するように、消費税の計算をする必要が出てきます。課税売上割合は、その調整計算が必要かどうかの判定と、その調整の入った適正な控除税額を算出するために使われます。
[3]調整計算が必要な場合
調整計算が必要な場合は、以下のいずれかに該当した場合となります。
①課税売上割合が95%未満の場合
②課税売上高が5億円を超える場合
(補足説明)
①は、非課税売上げがあった時に調整するものですので、課税売上割合が95%以上である場合は、事業全体からみるとほとんど非課税売上は無いと言えるため、調整計算は必要ないとしたルールです。ただし、②に該当するような多額の売上を上げているような所は、割合的に少ないと言っても、相当な金額になる場合が考えられるため、調整計算を行ってくださいとなっています。
[4]控除税額の計算方法
調整計算が必要な場合は、個別対応方式又は一括比例配分方式により控除税額を計算する事となります。
(1)個別対応方式
①課税仕入れとなる経費を次の区分で分けます。
(イ)課税売上にのみ要する経費
(ロ)非課税売上にのみ要する経費
(ハ)共通して要する経費
②計算式
(イ)+(ハ)×課税売上割合 = 控除税額
③説明
非課税売上げに係る経費分の消費税は、控除されなくなります。よってその分は事業者が負担する事となります。
(2)一括比例配分方式
一括比例配分の場合は経費を分ける必要が無く、課税仕入れとなる経費の全体に課税売上割合を乗じる形となります。
①計算式
経費全体×課税売上割合=控除税額
②個別対応方式への変更の制限
一括比例配分方式を選択した場合には、2年間は継続してこの計算方法を続ける必要があります。
③説明
簡便的な計算方法で、何に係った費用であるかは考慮せず、課税売上割合を乗じるため、経費全体の内非課税売上げの割合分を差しい引いた金額が控除税額となります。
※文中分かりやすさを重視するため、税法用語では無い表現を使用しております。
(消費税法30条の①②④⑥、消費税施行令48の①、消費税法6条の①)