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中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入

税理士法人サポートリンクの前田です。

今回は、中小企業者にとってお得な制度の一つ「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(以下少額償却資産の特例という)についてご紹介したいと思います。

 

①概要

取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した場合に、購入した事業年度において全額を費用計上できる制度です。ただし、その減価償却資産の取得価格の合計額の上限は1事業年度300万円となります(事業年度が1年に満たない場合には300万円を月数で案分した金額が上限となります。(例)8か月だと200万円が上限)。

[租税特別措置法第六七条の五]

 

②対象となる企業

青色申告をしている中小企業者で、常時使用する従業員の人数が1,000人以下の法人が対象となります。

 

③少額償却資産の特例のメリット

通常備品などの減価償却資産を購入した場合10万円以上の物は資産計上し、取得価格を法定耐用年数で減価償却(期間按分する形)して費用化する事になります。これが少額償却資産の特例を使った場合、30万円未満の固定資産については、購入した事業年度に全額費用計上できます。つまり、早く費用化する事ができるという事です。このことのメリットは何でしょうか。

このことは資金繰りに影響します。では、具体的にどうメリットがあるかを例で確認してみましょう。

 

前提:収益は20万円で、1期目に20万円の固定資産(耐用年数3年 定率法償却率0.667)を購入しました。他に費用は無い物とします。ここでは比較しやすいよう、税額端数処理を行っていません。

(少額償却資産の特例適用時)

事業年度 1期目 2期目 3期目 合計
収益 20万円 20万円 20万円 60万円
費用 20万円 0 0 18万円
所得 0万円 20万円 20万円 40万円
法人税(30%) 0万円 6万円 6万円 12万円

 

(少額償却資産の特例不適用)

事業年度 1期目 2期目 3期目 合計
収益 20万円 20万円 20万円 60万円
費用 133,400円 44,422円 22,178円 20万円
所得 66,600円 155,578円 177,822円 40万円
法人税(30%) 19,980円 46,673円 53,347円 12万円

 

少額償却資産の特例の適用時も不適用時も、3期間の合計は同じです。違いは、いつ費用化されるかが違うだけとなっています。

では、1期目をよく見てください。

すべて現金での収益だったとすると、1期目は20万円現金をもらい、20万円払って固定資産を購入しています。現金は期首と期末で増減がゼロです。少額償却資産の特例適用時は、法人税もゼロとなっているため、特に問題ないですが、少額償却資産の特例不適用時は、現金が増えていないのに、税金が19,980円の支払いが発生しています。納付期限までに収益からまたは、他に蓄えによって現金が用意できれば問題ないのですが、そうでなければ税金を支払うためにお金を別途用意しなければなりません。

ポイントは、現金支出があったのに、費用化されない部分がある場合には、税金の支払いが難しくなる可能性があるという事です。少額償却資産の特例の特例を使えば、このような状況を少し減らすことができますので、そういった事を踏まえてうまく利用してみてください。

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